2011年11月29日火曜日

名のない科学者

科学者のイメージとして、
他のグループよりも少しでも早く論文発表をすることで
その現象の発見者としての栄誉を得られるというものがある。
もちろん、かなりの分野でそれは正しい。

例えば、iPS細胞のような再生医療の分野などはかなり競争が激しいと聞く。
お金が絡む分野では特許権を巡っても熾烈な競争が繰り広げられる。


だが、
世の中には例外がつきもので、真逆の科学者たちも存在する。
それは、「暗号」の分野だ。
当然、暗号にかけるのは誰かに知られたくない内容だ。
その中には、政治的に重要な機密情報も含まれる。
もしも、他国の機密情報を知ることができれば、外交上とてつもないメリットがある。
もちろん、逆も然りである。

実際、歴史上、暗号の解読によって歴史が動いたといえることも数多い。
時には、戦争の情勢にも多大な影響を与える。

各国の政府機関が暗号の研究機関を置くのは当然だろう。
そして、その研究内容はトップシークレットとなる。


現在では、第二次世界大戦前後に関する情報公開が進んでおり、大学で発明されたと思われていた暗号システムが、ある国の情報機関でもっと早く発明されていたといったことも明らかになっている。


インターネットによる情報化社会が進んだ現在、暗号の重要性はより高まっている。
そして、最新の暗号に関する諸問題は、量子コンピュータができるのかなど最先端の科学とも関連している。
今日もどこかで名のない科学者たちが暗号の研究を進めている。



暗号解読〈上〉 (新潮文庫)