2011年10月24日月曜日

フェルマーの最終定理

就職活動のエントリーシートや奨学金の応募資料など、
自分の特徴をアピールしろという機会は多い。
紙に何行かの文章を書くだけで、自分の本質を表すことができるとは
誰も思っていないのだろうが、
書かなければ仕方がないので、必死に書く。
そんな作業につかれた友人が、
「私には、たくさんの長所があるが、この余白は小さすぎて書くことができない」と書いて企業に送ろうかなという冗談を言っていた。

もちろん、これはフェルマーの最終定理を念頭に置いた冗談である。
17世紀の数学者のフェルマーは、本の横にちょっとしたメモの形で数学的に重要なことを書いておく癖があった。
彼の死後、息子によってメモが公開され、数学者たちにフェルマーの偉業が知られることとなった。
数学的に重要ないくつもの定理が、フェルマーの不完全なメモをもとにして、数学者達の努力によって厳密に証明されたが、一つだけ証明することができない問題があった。

3 以上の自然数 n について、x^n + y^n = z^n となる 0 でない自然数 (x, y, z) の組み合わせがない
という定理だ。
この定理の下には、フェルマーによって
「私はこの定理を証明する驚くべき方法を見つけたが、余白が小さくて書くことができない」と書いてあった。


一見簡単なこの定理だが、フェルマーの死後300年以上にわたって、さまざまな数学者が挑戦したが難攻不落の城のように誰も証明に成功しなかった。

だが、
数学のさまざまな分野が発展するにしたがって光が見えてきた。
その過程で、日本人数学者が果たした役割も大きい。

そしてついに1994年、数学者ワイルズによって完全に証明された。

この本は、
フェルマーの最終定理が証明されるまでの過程を、関係者への取材を基に、人間ドラマを中心に描いている。

数学的な知識がなくても楽しめる。
こんな一見簡単そうな問題から、
ここまで壮大なドラマが生まれるのかと驚かされる。

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

2011年10月22日土曜日

オープンキャンパス2011

10月21,22日に柏キャンパスの一般公開がありました。
今年はGFP(緑色蛍光色素)など、
一つの分子を見るための手法の解説と展示を行いました。
たくさんのご来場をありがとうございました。

2011年10月17日月曜日

科学者とは

「わかる」という単語を変換しようとすると、
「分る」、「解る」、「判る」がでてくる。
現代の日本語ではどれでも大差はないと思うが、
語源を想像すると面白い。

「分る」は分割するという意味からきていて、分析好きの人にいいだろう。
「解る」は解答という意味からきていて、答えが存在する問題にいいと思う。
最後の、「判る」は判子(はんこ)という意味から来ていて、いかにもお役所的な
対応をするのによさそうだ。
 

さて、科学者の仕事を考えてみる。
いろいろな科学者を見ていると、「わかる」ということに対して、人によってスタンスが違うのが面白い。
たとえば、この問題の答えが「解った」というニュアンスで発表する人、
「分析」を中心に仕事を進める人、これは有名な先生が主張しているから「判った」というような権威主義の人など、科学者の数だけ考え方が違う。


科学者という仕事が、正直とらえどころがないのは、科学者が自由な職業だからだ。
この本では、
具体例を通じて、科学者の仕事の本質を考えさせてくれる。

筆者によると、科学者になるには究極的には以下の問題が解ければいい。
1)何かおもしろい問題を考えよ。
2)1)で作った問題の答えを考えよ。

確かにこれは本質をついていると思う。

科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか (中公新書 (1843))

2011年10月11日火曜日

ついに発売 ~その2~

佐々木研では放射光をメインに使用しているが、
使用波長はX線なので、
X線の基礎を学ぶ必要がある。

新たな分野を学ぶ時は、
当然、教科書のような本があるにこしたことはない。

現在活躍している先生に聞くと、
必ずと言っていいほど、
X線回折・散乱技術〈上〉という菊田先生の本を紹介していた。

だが、これには大きな問題があった。
もう絶版になってしまっていたのだ。

現在は、インターネットの時代ということで、
ネットで探すと、
存在はするものの、一時期は最低価格でも2万円を超える値がついていた。


そんな中、
菊田先生による X線散乱と放射光科学 基礎編がついに発売された。
価格は3990円でやや高いが、一時期の中古品価格の高騰を考えると安くも感じられる。

X線の入門のために。

P.S.
2011年10月11日現在、X線回折・散乱技術〈上〉のamazonでの最低中古品価格は
8000円まで下がっている。
古本屋の方々の目利き能力に脱帽。


X線散乱と放射光科学 基礎編

2011年10月4日火曜日

10月は実験の始まり

運動会も終わり、佐々木研はいよいよ実験シーズンとなりました。

そして今我々はSP8です。

高速のX線回折動画を取るシステムも安定し初日から絶好調!!

芸術の秋ということで実験風景を芸術的にしてみました。



無駄に加工して遊んでいます。。


2011年10月3日月曜日

基礎体力をつける(物理数学)

ラグビーワールドカップがニュージーランドで開催されている。
といっても、残念ながら日本は予選で敗退が決定してしまった。

日本代表も着実に力をつけていると思う。
実際、日本代表の奪うトライは美しいものが多い。
しかしながら、世界のレベルとはまだまだ隔たりがあるのも事実だ。

何がそんなに違うのか?
一つ明らかなのは、近年は大型な日本人選手も増えてきてるとは言え、
やはり体格、筋力において劣るということだ。
基礎的な体力の違いは大きい。

基礎体力の重要性は何もスポーツに限った事ではない。

物理における基礎体力の一つは数学である。
例えば、ロシアの天才物理学者、ランダウは数学の力をつけてから
物理を学ぶべきだと考えていたらしい。

もちろん、数学をしっかり学んできてから、物理に入れるのならばそれに越したことはないが、なかなか時間や労力的にも厳しいものがある。
エッセンスをサクッと学びたいというのが本音の方も多いだろう。

この本は、やや古い本だが、本質を突いた本で、長い間売れ続けている。
いつの間にか、
普及版としてブルーバックスからの発売に変わっていた。
新書だとちょっと読みにくい気もするが、お手頃価格で手に入る。



物理数学の直観的方法 〈普及版〉 (ブルーバックス)