2011年5月30日月曜日

物理が専門の方へ-生物入門

 高校の理科は物理、化学、生物、地学といった具合に分かれている。もちろん、これはこれで意味のある分け方なのであるが、学問の世界になると、それらの境界線は微妙である。そして、そういった境界領域には、多数の面白いテーマがある。これは、境界領域が面白いというよりも、ある分野に他分野の考え方を取り入れることによって、新たな面白い研究が生まれると言った方がいいかもしれない。実際、大学では、生化学や物理化学は、もう完成された学問体系として講義されている。我々の研究室が取り組んでいるのは、まさに今、研究対象として、ホットな生物物理学である。

 物理的な観点から、生物に影響を与えた人物としては、シュレーディンガーがあげられる。もちろん、量子力学で出てくるシュレディンガー方程式のシュレディンガーである。非常に難しい学問の一つ、量子力学の基礎を作ったシュレディンガーであるが、量子力学の発展には、なかなかついていくことができなかったという逸話も残っている。その、シュレディンガーが晩年に書いた本が、「生命とは何か」である。この本で、シュレディンガーは、個々の粒子は、個性を持たないにも関わらず、生物という多様なものが作られるのは、1 mol(6×10^23個)という非常に膨大な数の粒子の確率的な振る舞いが本質であると指摘した。これが、物理的に生物を説明できるという考えの先駆けとなった。ちなみに、この本に影響を受けた当時の若者として、ワトソンとクリック(物理学者)がいる。もちろん彼らは後のDNA発見者だ。


 「生命とは何か」も非常にいい本であるが、やや内容も古く読みにくい部分もある。(薄い本なので読むとしたら英語版でもいいだろう。)そのような中で、数年前にベストセラーになった「生物と無生物の間」は、
非常に読みやすい。アメリカでの研究環境の話なども出てくるので、違う分野でも研究者を目指す人にも有用だと思う。同著者の「動的平衡」もいい。

 他分野(だと自分が思っている)のことを自分のバックグラウンドをもとに考えてみると思わぬ発見があるかもしれない。

p.s. 佐々木研では、生物物理学が中心ですが、放射光学会、表面化学会、応用物理学会など様々な分野の学会にでるチャンスなどもあります。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)