2011年6月6日月曜日

非線形科学の可能性

 筆者が中学生のころの話である。定期テストが近づいてくると、テストに向けての計画を立て始める。あくまで計画を立てるだけで、勉強は始めない。普段は部活動があるからだ。テストの一週間前になると部活動が休みになるから、その一週間が勝負だ。何もしないと、テストは50点くらいしか取れない。テスト前1週間、各科目30分ずつ勉強する。1日の勉強で5点分ずつ実力をアップすれば、テストで85点とれるはずだ。といった計画を立ててテストに臨む。当然、結果は惨敗。やれ追試だ、やれレポート提出だといったことになるのだった。

 人は物事を考えるときに、直線的に考えがちだ。1日の勉強で5点分ずつ実力をアップするといったような考え方がこれに当たる。このような考え方を「線形」という。実際は、学力というのはなかなか伸びない。付け焼刃はなかなか通用しない。テストの点数的にはなかなか伸びないが、勉強をコツコツと続けていく。すると、突然、点数が伸び始める。このように、まっすぐではない現象を「非線形」という。

 「非線形」の本質は、フィードバックのあるシステムである。何らかの作用がおこることで、そのシステムに影響を与えるということだ。例えば、英語を勉強すると、英単語の知識が蓄積されて、どんどん英語の勉強が楽になっていく。

 このように考えると、世の中の現象は、ほとんどすべて「非線形」といってよい。しかし、どうしても人間の理解は「線形」の方がわかりやすい。科学の世界でも、スケールによっては、「線形」近似が非常によく成り立つものも多いため、「線形」で議論されることが多い。だが、研究を進めていくうちに、「線形」では太刀打ちできない問題に出会う可能性もある。

この本は、そんな「非線形」現象について非常によくまとまっている。

新しい自然学―非線形科学の可能性 (双書 科学/技術のゆくえ)