2011年7月11日月曜日

情報の洪水の中から浮かび上がるもの

放射能汚染がとまらない。

放射能という言葉に馴染みのない方は、不安に感じている人も多いだろう。
安全性に関してこれだけ情報が錯綜してしまった原因は、放射線が生物に対して与える影響について分かっていない部分が多いことがあげられる。
生物というのは、未だに科学にとって複雑なシステムであり、一筋縄では理解できない。

だが、放射能という物理現象に限ってみてみると、かなりのことが理解できていると言える。放射能に関する現象は、理論的な数式で表すことができ、現象をその数式でしっかりと説明できる。今回の事故のように、測定機器まで壊れてしまえばお手上げだが、しっかりとデータさえあれば、現在の技術で、怖いほどピタリと現象を予測できてしまうのである。


理論的に良く分かっている現象なのであれば、さぞかし単純だと思うかもしれないが、実は一つの放射性原子を考えるとそうではない。一つの原子がいつ放射線を出すかかというのは、確率的な現象だ。つまり崩壊する確率は分かっているが、いつ崩壊するかは分からないということである。一つの原子の変化を正確に予測できなくても、理論的にかなり正確に予想できるのは、我々のスケールの世界にはあまりにも多くの数の原子があるからだ。膨大な数になれば、統計的に事象をとらえれば、ほぼ完ぺきに近いほど正確に予想できるのである。


さて、我々人間は、実に気まぐれだし予想なんかできそうにない。例えば、交通事故を考えると、事故の数だけ原因があるとも考えられる。たまたま体調が悪かったとか、たまたまその日だけ夫婦喧嘩をしたとか、いくらでも特別な事情があるだろう。しかし、ひたすらデータを蓄えて統計的に見ると、規則性が浮かび上がってくる。どのような道路で事故が起こりやすいか、どんな時間に起こりやすいか、どのような人が事故を起こしやすいか・・・。統計のなせる業である。


インターネットの発達した現在は、情報を蓄え、分析するコストが格段に安くなった。また、クレジットカード、個人情報を登録して利用するサービスなど、情報量も増えた。洪水のように情報が世界を駆け巡っている。この情報をうまく解析すれば、なにか特別な法則が見えてくるかもしれない。あるいは、あなたの知らないうちにあなたの行動を分析されているかもしれない。

この本は、
近年急激に増える様々な統計的手法利用の具体例をわかりやすく示している。
そんなことまで分かってしまうのかということも多い。


その数学が戦略を決める (文春文庫)