学問の世界では良く聞く言葉である。
科学の世界は、情報が莫大に蓄積されすぎてしまい、分野は細分化され一人の人間の関われる分野はどんどん狭くなっている。
実際、比較的狭い分野に集中することで成果をあげていく科学者が多い。
このような状況の中で、例外的な研究生活を送った科学者がいる。
ピエールジル・ドジャンヌ、フランスの科学者である。
ドジャンヌは超伝導、磁性、液晶、高分子など様々な分野を10年くらい研究しては分野を変えていった。
すごいのは、その多くの分野で活躍していることである。そして、分野を変えるときには、今まで関わっていた分野の本を執筆している。
1991年には、高分子分野の研究でノーベル賞を受賞した。
その時の講演タイトルが「ソフトマター」である。
今では、ソフトマターという言葉も高分子などを表すのに一般的に使われているが、この講演で初めて使われた言葉である。
ドジャンヌが大きな成果をあげた一つの理由は、細部ではなく、心に映る本質的な現象を見ようとしたことにある。
その手法が、あたかも絵画の印象派と似ているから、「印象派物理学」とも呼ばれている。
残念ながら、ドジャンヌは2007年に亡くなった。
この本は彼の最後の著作である。
「しずく・あわ」といった身近にある現象を「印象派」の観点でとらえている。
付属CDの動画も楽しめる。
